雇用契約書は、会社(使用者)と労働者の間で、「働きます」「その対価として賃金を支払います」という**合意(契約)**があったことを証明するための書類。
民法上、雇用契約は口頭でも成立しますが、後々の「言った、言わない」というトラブルを防ぐために、書面で契約内容を明確に残しておくのが一般的です。
根拠条文: 労働契約法 第6条
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
つまり、雇用契約書は**「双方の合意」を証明する**という点が最も重要な役割です。
ここが一番混同しやすいポイントです。
実務上は、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」として、一枚の書類で両方の役割を兼ねることが非常に多いです。この形式であれば、法的な義務(労働条件の明示)と、双方の合意の証明を一度に行えるため効率的です。
雇用契約書に「これを必ず書かなければならない」という法律上の決まりはありません。しかし、通常は労働条件通知書で明示すべき事項(前回の回答を参照)に加え、以下のような、より個別的で詳細な合意事項が盛り込まれます。
労働条件通知書と共通の項目
契約期間、就業場所、業務内容
労働時間、休日、休暇
賃金(金額、計算方法、支払日など)
退職に関する事項
雇用契約書独自の項目(合意形成が重要な事項)
秘密保持義務: 在職中や退職後に、会社の機密情報を漏洩しないことの誓約。
競業避止義務: 退職後、一定期間は競合他社へ就職したり、競合する事業を自分で始めたりしないことの誓約。
知的財産権の帰属: 業務上で行った発明や創作物の権利が会社に帰属することの確認。
損害賠償: 労働者の故意または重大な過失によって会社に損害を与えた場合の取り決め。
個人情報の取り扱いに関する同意。
その他、個別の合意事項(例:転勤や職種変更の可能性など)
就業規則: 会社の全体的なルールブック。
労働条件通知書: 法律に基づき、会社が一方的に労働条件を明示する義務的な書類。
雇用契約書: 会社と労働者が対等な立場で合意したことを証明する契約書。
この3つはそれぞれ役割が異なりますが、互いに関連し合って労働者の権利と会社の秩序を守っています。特に、雇用契約書(または労働条件通知書 兼 雇用契約書)は、ご自身の働き方を決定づける最も基本的な書類ですので、入社時には必ず内容を隅々まで確認し、不明な点があれば質問した上で署名・押印することが重要です。