労働者名簿は、企業(使用者)が雇用する労働者の情報を記録した名簿のことです。
これは、労働基準法によって作成と保管が義務付けられている非常に重要な書類で、「法定三帳簿(ほうていさんちょうぼ)」の一つとされています。残りの2つは「賃金台帳」と「出勤簿」。
根拠条文: 労働基準法 第107条
使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日々雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
会社の規模に関わらず、労働者を一人でも雇用していれば作成する義務があります。パートタイマーやアルバイトも対象に含まれます(日雇い労働者は除く)。
労働者名簿には、法律で定められた以下の項目を必ず記載する必要があります。
根拠条文: 労働基準法 第107条 および 労働基準法施行規則 第53条
氏名
生年月日
履歴(社内での異動や昇進など)
性別
住所
従事する業務の種類
ただし、常時30人未満の労働者を使用する事業場では、記載しなくてもよいとされています。
雇入の年月日(入社日)
退職の年月日とその理由(解雇の場合はその理由も含む)
死亡の年月日とその原因
これらの情報に変更があった場合は、遅滞なく訂正する必要があります(例:結婚による氏名変更や引っ越しによる住所変更など)。
作成した労働者名簿は、法律で定められた期間、保管する義務があります。
保管期間: 5年間(ただし、当分の間の経過措置として3年間とされています)
起算日(いつから数えるか): その労働者の死亡、退職、または解雇の日から数えます。
根拠条文: 労働基準法 第109条
この保管義務に違反したり、そもそも労働者名簿を作成しなかったりした場合は、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
労働者名簿は、単なる従業員リストではなく、法律に基づいて適正な労務管理を行うための基礎となる重要な書類です。労働基準監督署の調査(臨検)の際には、提出を求められることもあります。
企業にとっては、従業員の情報を正確に把握し、万が一の労務トラブルの際に事実関係を証明する資料としても役立ちます。